エジソン ディスク・フォノグラフ C-150 1915年製

エジソン社の
ディスク・フォノグラフC-150、
1915年製です。

一年程前に修理して
本ブログでお披露目しました。
(「エジソン ディスク・フォノグラフ」
でGoogle検索可能)
自宅に訪れたお客様には、
必ず生音を聴いていただきます。

つい先日、
いつものようにSP盤のレコードを
聴いていると、突然〝バーン!〟と、
サウンドボックスも飛び上がるような
衝撃音がして、
ターンテーブルが止まりました。
いやな予感が・・・。

そうです、まさかの〝ゼンマイ切れ〟。
確かに100年働いてきた
ゼンマイですから、
いつ金属疲労による断裂を起こしても
不思議ではありません。
でも、お気に入りの機種だけに、
このままお蔵入りというのは
どうしても避けたい。

かくして
「エジソン・ディスク・フォノグラフ
復旧プロジェクト」が始まりました。

①ゼンマイの確認
まずは断裂箇所の確認です。
本体からゼンマイモーターを外します。

ゼンマイは蓄音機の心臓部です。
強固な金属製のケースの中に
しっかりと密閉され、
通常は見ることの無い
まさに「聖域」です。
エジソンのディスク・フォノグラフは、
ターンテーブルの回転と同時に、
大きなホーンの付いたトーンアームを
強制的にスライド移動させる機能が
あるために、通常の蓄音機よりも
非常に強力なゼンマイを必要とします。

ゼンマイモーターの大きさからも
想像できましたが、
実際開けてみると
そのゼンマイの長さや幅や厚さが
尋常ではなく、思わず腰が引けました。

大型蓄音機と言われている機種でも、
ゼンマイは幅2.6センチ、
厚さ0.6ミリ程度が多いのに対し、
このエジソンの蓄音機は幅3.8センチ、
厚さ0.8ミリもあり、
ゼンマイの上でお肉の鉄板焼きが
できそうです。

さて、断裂箇所を確認すると、
クランクにつながる巻き取り部分に、
二周程ゼンマイが巻き付いた状態で
裂けるようにちぎれていました。
それ以外のゼンマイはそのまま
残っていたので、
まだまだ使えそうです。
まさに不幸中の幸いという感じです。

SANY0544_convert_20120513065918.jpg

②断裂部切断、穴あけ
巻き取り部分には、
ゼンマイを引っ掛けて回すための
突起が付いています。
つまりゼンマイの方にも
それに合わせた穴が必要です。

切れたゼンマイの穴のサイズを参考に、
新たな穴あけです。
電気ドリルでも歯が立たない硬さで、
圧縮空気を使った高速切削器具を使い
穴あけと断端の切断を行いました。

SANY0545_convert_20120513071011.jpg

③ゼンマイの屈曲
ゼンマイを巻き上げるためには、
突起のある巻き上げ部分にゼンマイが
近接していなければなりません。

ところが、固くて弾性のあるゼンマイを
小さく曲げるのは至難のわざ。
両手にペンチを握り、
どんなに力一杯曲げても、
見事に戻ってしまいます。
熱処理によって形状が記憶されています。
再度加熱して焼き戻さなければなりません。
鍛冶屋なった気分です。
なんとか中心軸にフィットする屈曲ができました。

vcm_s_kf_repr_350x196.jpg
SANY0541_convert_20120513074120.jpg
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④ゼンマイ収納
グリスアップしたらいよいよゼンマイ
金属製のケースに収めます。
握力の弱い私には辛い作業です。
死に物狂いで一気に入れてしまいます。
ちょっと気を抜くと、
ビックリ箱から首長ピエロが
飛び出すように、全部出てしまいます。
(ゼンマイが飛び出す時、
ポヨ~ンと本当に間抜けな音がして
情けなくなります)

通常の蓄音機のゼンマイとは
比較にならない強い力が必要です。
せっかく苦労してケースに収めた
ゼンマイですが、
実はクランクに一つギアが付いていて、
クランクの回転と反対に
ゼンマイが巻かれることを
すっかり忘れていました。
かくしてもう一度全部取り出して、
逆方向に収め直すことになりました。

動画には、後の展開も知らず、
必死に逆に入れている様子が
映っています。

SANY0546_convert_20120513121107.jpg

⑤本体取付
そして、再度本体に戻して
作動確認します。
元気一杯動き出しました。
苦労が報われる瞬間です。

もちろんいつまたゼンマイが切れるか
分かりませんが、
無理な巻き上げに気を付け、
今まで以上に大切に扱いたいと思います。

vcm_m_sf_repr_960x540_convert_20120513190954.jpg

今回、
ゼンマイモーターのケースの中の、
真っ黒に固まったグリスを
清掃しながら、
これではスムーズな動きは
できなかったであろうと、
改めてオーバーホールの大切さを
実感しました。

まさに心筋を養う冠状動脈の
動脈硬化が進行した状態でした。
そういう私も
コレステロールが少々高めで、
真剣に身体のオーバーホールを
考えないといけません。
ポヨ~ンと伸びきったゼンマイの横で、
ペンチを握ったまま
心臓発作で倒れていても、
全く洒落になりませんから・・・。

私のお気に入りSP盤、
ビング・クロスビーの
1952年のヒット曲、
『ドミノ』と『青春の想い出』を
鑑賞しました。

共に斬新な編曲で、
50年代のハリウッド映画のように
ドラマチックに作られています。
メリハリのきいた演奏が、
蓄音機での再生によくマッチしています。


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P1150013_convert_20120513185054.jpg
エジソン ディスク・フォノグラフ 
C-150

P1150021_convert_20120516205758.jpg
ビング・クロスビーのSP盤
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まとめtyaiました【エジソン ディスク・フォノグラフ C-150 1915年製】

エジソン社のディスク・フォノグラフC-150、1915年製です。一年程前に修理して本ブログでお披露目しました。(「エジソン ディスク・フォノグラフ」でGoogle検索可能)自宅に訪れたお客様には、必ず生音を聴いていただきます。つい先日、いつものようにSP盤のレコードを?...

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No title

正に心臓手術!ご苦労さまでした。音を取り戻した時は喜びひとしおでしたでしょうね。

先週末からタチの悪い風邪をひいてひどい目にあっています。くれぐれも油断めされることなきよう…。

コメントありがとうございます

JackD さま
心臓手術はできれば避けたいですね。
手術する方が心臓に悪い気がします。
これでまた元気に動いていますから、人間よりはるかにタフです。

年中何かしらの風邪菌が飛んでますね。
私も少々喉の奥にいやなイガイガを感じています。
本当に人間はヤワですね。

病みあがりはとくにお大事に。
コメントありがとうございました。

No title

keiai さんの テクに圧倒されました。
そして修理に耐える100年も前の蓄音機。
当時のテクノロジーの高さに驚きます。
使い捨てのデジタル機器が溢れている現代に一服の清涼剤です。
keiai さんの 尊敬すべき技術を後世に伝えていただきたいです。

コメントありがとうございます

ミキタカ08 さま

お褒めいただき嬉しく思います。
やっていること自体は、決して難しいことではなく、
腕力や握力の方がメインの作業です。
きっと、どうしても復旧したいという強い思いが一番大切
なんでしょうね。
当時ゼンマイを入れた人から、バトンを引き継いだ感じです。
このバトン、この後もつながっていくと良いのですが・・・。

コメントありがとうございました。
プロフィール

keiai

Author:keiai
こんにちは!
ゼンマイ式の蓄音機
から、電気蓄音機、
テープレコーダー、
CD、DVDへと進化
していく時代の流れ
の中で、創り手の
情熱があふれる名機
がいくつも生まれ
ました。
そんな逸品で当時の
レコードを再生し、
その時代に想いを
はせてみたいと
思います。
ご一緒に浪漫紀行を
楽しみましょう。

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